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近代日本の夜明けと乳製品 -普及に尽力した医療関係者・教育者たちの功績をめぐってー
著者名
東四柳 祥子 (HIGASHIYOTSUYANAGI Shoko)
出版日
2017/12
概要
研究発表 (社)日本家政学会日本食文化研究部会月例会 日時 2017年12月9日(土)14:00~16:00 場所 クックパッド本社 (要旨)幕末から明治の転換期、西洋食文化との出会いの中で、日本の乳製品事情は大きな転機を迎えます。これまでの薬餌的な意味合いとは別に、国是として掲げられた富国強兵政策の下、肉食同様、乳製品もまた文明開化を象徴する食品として注目され始めたのです。しかし、その実態がつかめず、右往左往する多くの日本人がいたことも事実であり、こうした状況に対応すべく、1870年代以降、乳製品の正しい知識について解説する書籍が出まわるようになります。特に大正期には、牛乳・乳製品を家庭の定番品に仲間入りさせることを奨める主張が顕著となり、児童の体格改良に適した優良食品というイメージのもと、アメリカの乳製品奨励運動にふれながら、積極的な飲用・利用が推奨されました。こうした牛乳・乳製品への関心の高まりは、1920年代の書籍の中でいっそう盛り上がりをみせることとなり、家庭の読み物としての乳製品専門書の出版、さらには家庭の主婦を対象とした講演会が開催されるなど、適切な摂取法・利用法に留意しながら、牛乳・乳製品を積極的に日常生活のなかへ取り入れることを奨める動きへと繋がっていきます。本報告では、明治・大正期の書籍にみる牛乳・乳製品のイメージの変遷を追いながら、当時の医療関係者・教育者たちが語る乳製品論を比較考察いたします。危険視されがちだった牛乳・乳製品のイメージの払拭に挑んだ先人たちの奔走の軌跡を、みなさんと一緒に紐解いていきたいと思っております。