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獨逸語教科書に採用されたグリム童話
Reception of Grimm’s Fairy Tales in Japan
副題
明治・大正期を中心に : A Study of German Textbooks from the Meiji and Taisho Era
著者名
野口 芳子 (NOGUCHI YOSHIKO)
出版社/掲載誌名
梅花女子大学心理こども学部紀要
巻号
11
10 - 21
出版日
2021/3
キーワード
グリム童話、獨逸語教科書、日本での受容、明治・大正期、道徳教育
概要
この論文の目的は、明治期と大正期において日本で出版された獨逸語教科書のなかに、どのようなグリム童話 が紹介されているのかを明らかにし、その理由について考察することである。 英語教科書によるグリム童話の導入についての研究は進んでいるが、獨逸語教科書による導入についての研究はほとんどなされていない。調査の結果、エンゲリン讀本、ボック讀本などを中心に、27 冊の獨逸語教科書に25種類のグリム童話が収録されていることが判明した。もっとも多く収録されているのは、KHM78「老いた祖父と孫」とKHM146「蕪」であり、いずれも現在では知名度の高い話ではない。「忠孝の徳」などの教訓を説く話を中心に選ばれたからであろう。一方、児童雑誌で紹介された「狼と七匹の子山羊」、「蛙の王様」、「白雪姫」などの話は、その後広く一般に普及していく。「文学性」を中心に選ばれたからであろう。獨逸語教科書に採用されたグリム童話は「教訓性」に焦点を当て、児童雑誌に掲載されたグリム童話は「文学性」に焦点を当てて選択されたのであろう。時代の要求に沿った道徳心ではなく、想像力を磨く話が後世に生き残るということであろう。